(1)はじめに:どのような体の性の状態が、性分化疾患に数えられるのですか?

 このセクションでは、性分化疾患のいくつかのタイプについて基本的な説明をしていきます。性分化疾患には、数十もの疾患(体の性の状態)が含まれています。先に紹介しましたが、性分化疾患とは、「 染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」と定義される医学用語です。ですので「性分化疾患」とは、典型的な男性の体の性の発達、典型的な女性の体の性の発達とは異なる体の性の発達をした、幅広い様々な体の状態を指す包括用語でしかなく、そういう性別があるわけではないのです。

 性分化疾患として数える体の状態の正確な数は、いくつかの理由から出すことができません。それは、(1)いくつかの体の状態(疾患)が、正式に性分化疾患に含められる場合もあれば含められない場合もあり、性分化疾患の全体の数は、人の数え方によって変わってくるからということ。たとえば、性染色体のモザイク型には多くのバリエーション(XX/XYや、X0/XYなど)があり、そういった性染色体のどこまでを性分化疾患として考えるのかどうか、ひとつひとつ決めなくてはならないことになります。「性腺発育不全」も、数多くの様々な体の性の発達状態を指す用語として用いられており、どこまでの発達状態を性分化疾患に数えるのか同じような状況があります。(2)いくつかの体の状態(疾患)では、他の人とは少し違った体の性の発達をする場合もあればそうではない場合もあるから。先天性副腎皮質過形成(CAH)は、そういう疾患(体の状態)のひとつです。(3)現在でも医学では、新しい性分化疾患のひとつが同定されたり、様々な性分化疾患のかすかなバリエーションを見つけだすこともあるから、などです。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)