Y染色体があれば男性で、それがなければ女性なのですか?

 いいえ、違います。まず、ここでの話は、身体的には何も問題のないトランスジェンダー性同一性障害など)の人々のことではないことに注意してください。性分化疾患の場合はですが、男性もしくは女性であるというのは、性自認・性別同一性の問題で、単純に染色体の数で決まるものではありません。確かに私たちの染色体上にある遺伝子は、私たちの体の発達の一因とはなりますが、遺伝子は、私たちの、男性か女性、男の子か女の子という性自認を決定づけるものではありません。

 XやY染色体は、人の体の性がどのように発達するかの要因となるため、「性染色体」と呼ばれています。大多数の男性はXY染色体を持っていて、大多数の女性はXX染色体を持っています。

 ですが、XY染色体を持つ女の子や女性もいます。これはたとえば、アンドロゲン不応症を持つ女の子に起こります。XX染色体をもつ男の子や男性もいます。これはたとえば、Y染色体の遺伝子がX染色体にくっついていて、そのX染色体がY染色体のようにはたらく原因となる場合に起こります。また、性染色体がXXYとX染色体がひとつ多い状態でも(クラインフェルター症候群と言います)、一方のX染色体は不活化され(働かない状態になり)、体の表現型は男性で、性自認も男性になります。この場合X染色体が2つあるからといって、女性ということにはならないのです。

 それに、体の性の発達の要因となる染色体上の遺伝子は、XやYの上以外にもあります。こういったことから、「性染色体」という言い方は、実際は少し誤った言い方なのです。ある人がXXを持っているのかXYを持っているのか(それとももっと別の組み合わせなのか)を見るだけでは、その人の体の性の発達を最終的に判別できるとは限らず、その人の性自認を確実に言い当てることもできないのです。(これは、トランスジェンダー性同一性障害など)の人のことではありません)*1

 私たちの大多数が、自分の「性染色体」がどういうものか知らないけれども、自分が男性であるか女性であるかを知っているということを思い出してみるのもいいでしょう。性自認・性別同一性は、自分が自分のことを誰だと思うかということであって、顕微鏡のスライドガラスの上で性染色体がどんな風に見えるかということではありません。お医者さんは、診断を見つけ出すためのひとつの手段として、性分化疾患を持つ人の「性染色体」を検査しますが、「性染色体」だけを、何かの単純な答えとして扱っているわけではありません。私たちの「性染色体」は、私たちが誰であるかを映し出す写真のほんの一部でしかないのです。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

*1:訳者注:この文章が、CAISやスワイヤー症候群の女性、XX男性を念頭に書かれていることに注意。

性分化疾患を持つ人は、好きな人を見つけて、その人のパートナーになることはできるのですか?子どもは持てるのですか?

 当然イエスです!多くの人がそうされています!

 性分化疾患を持つ人が、生物学的なつながりのある子どもを持てるかどうかは、その人の特定の体の状態によって違います。性分化疾患の中には、男性あるいは女性として、生物学的なつながりのある子どもを持つことができないものもあります。生殖医療が進歩すれば、子どもを持てる可能性がある性分化疾患もあります。そしてもちろん、性分化疾患を持つ人はみんな、養子縁組をすることで親になることができるのです。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、CAISを持つ女性ジャズシンガー、イーデンさんと、養子縁組された息子さんです)

性腺発育不全とは何ですか?

 「発育不全」とは、「正確に発達していない」状態、つまり本来期待されるはずのはたらきをしない器官の状態を表します。

 性腺発育不全とは、ある人の性腺(卵巣や精巣)が、胎児発達期に適切に発達しなかった状況のことを言います。発育不全性腺は、「線状(病跡)性腺」と呼ばれることもありますが、これは、通常の精巣や卵巣のような球状ではなく、細胞が筋状のような状態になっているからです。

 線状(病跡)性腺は、卵巣や精巣のような機能を果たしません。生殖機能を果たさないのです。ある状態では、性腺がんのリスクが高いため、診断後すぐさま外科的に切除されます。

 ターナー症候群スワイヤー症候群など、性腺発育不全を呈する性分化疾患は、様々に多くあります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

卵精巣とは何ですか?

 典型的な体の性の発達では、胎児は「原性腺」(精巣や卵巣などの元になる器官です)と呼ばれる2つの小さな器官を発達させていきます。そして男性の場合は、原性腺は精巣になり、女性の場合は卵巣になっていきます。そしてある種の状況では、原性腺は卵精巣(卵巣の細胞要素と精巣の細胞要素を含む性腺のことです)に発達していきます。

 性腺の2つともが卵精巣の状態で生まれてくる人もいれば、1つは卵巣でもう1つは卵精巣という状態や、1つは精巣でもう1つは卵精巣という状態などで生まれてくる人もありえます。卵精巣を持つ人の中には、完全に典型的な女性として生まれてくることもあれば、完全に典型的な男性として生まれてくることもあれば、ひと目ではどちらともつかない(形成不全外性器の)状態で生まれてくることもあります。

 卵精巣の精巣部分は性腺がんのリスクが高まります。このため、卵精巣が診断された場合は、精巣組織は通常外科的に切除されます。男の子・男性として自分を認識している患者さんの場合は、卵巣組織も切除する人が多いです。

 卵精巣を持つ人には、多くの様々な、染色体と身体構造の組み合わせが見られます。そのため、卵精巣の診断自体がそのまま、患者さんの性染色体や遺伝子構成、体内の生体構造の変異を示すことにはなりません。これら様々な要素については、別途、検査が必要になります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、卵精巣を持って生まれた女性、ボーさんです)。

性染色体モザイクとは何ですか?

 ほとんどの人は、その人を構成する細胞それぞれの中に、46個の染色体を持っていて、そのうちの2つが性染色体です。ほとんどの女性・女の子は2つのX性染色体(46,XX)を持っていて、ほとんどの男性・男の子はX染色体を1つとY染色体を1つ(46,XY)持っています。

 しかし、人々の中には、「モザイク型」の染色体、つまり、その人の細胞全てが同じ組み合わせの染色体とは限らない人もいます。「モザイク型」と呼ばれるのは、体が1色のタイルだけで作られているのではなく、様々な色のタイルで作られているような状態だからです。ある人が1組だけ以上の性染色体を持っている場合、その人は「性染色体モザイク」を持っていると言われます。

 つまり、ある細胞は46,XXで、ある細胞は46,XYという人もいますし、ある細胞は46,XYで、ある細胞は47,XXYという人もいるのです。更にまた、ある細胞は45,Xで、ある細胞は46,XXという人もいます。多くの様々な組み合わせがありうるのです。

 よくある誤解として、性分化疾患のすべての体の状態は、性染色体がモザイクになっているというものがありますが、実際には、性染色体がモザイクの性分化疾患はそれほど多くありません。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

ミュラー管遺残症候群(PMDS)とは何ですか?

 胎児は最初は、2つの種類の生殖器官を持っています。ひとつはミュラー管、もうひとつはウォルフ管です。典型的な女性の場合、ウォルフ管は消失し、ミュラー管が子宮、卵管、ヴァギナの上側までを形成します。また典型的な男性の場合は、ミュラー管は消失し、ウォルフ管が成長して、前立腺や輸精管など、男性特有の様々な器官に発達していきます。

 (46,XYの)男性の胎児がミュラー管遺残症候群(PMDS)を持っている場合、その名が示すとおり、ミュラー管がなくなることなく、残り、むしろ成長していきます。PMDSを持つ男性は、体の内側も外側も通常の男性に特有の器官を発達させますが、それに加えて、子宮や卵管といった女性に特有な体内器官もいくつか発達させることになります。この体の状態は、時に精巣が陰嚢に降りてこない状態(停留精巣)を併発することがあります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

ターナー症候群とは何ですか?

 ほとんどの人は、その細胞各々に46個の染色体を持っていて、そのうちの2つが性染色体にあたります。ほとんどの女の子・女性は、2つのX性染色体を持っています。(そのため、その組み合わせは「46,XX」と呼ばれています)。ほとんどの男の子・男性は1つのX性染色体と1つのY性染色体(「46,XY」)を持っています。

 ターナー症候群とは、細胞に含まれる性染色体が、45,Xである人の状態のことを言います。言い換えれば、ターナー症候群の女性は、2つのX性染色体の代わりに、1つのX性染色体を持っていると言えるでしょう。(この状態は「45,X0」と表記されることもあります)。

 ターナー症候群を持つ女性の中には、性染色体がモザイクの状態、つまり、全ての細胞が同じ組み合わせの染色体とは限らない状態の人もいます。「モザイク」と呼ばれるのは、言ってみれば、体が1色のタイルだけではなく、様々な色のタイルでできあがっているとも言えるからです。もしある人が1種類以上の染色体の組み合わせを持っている場合、その人は「性染色体モザイク」を持っていると言われます。ある細胞は45,Xで、ある細胞は46,XXという人もいます。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、ターナー症候群を持つ双子の女の子です)。