カルマン症候群、視床下部性性腺機能低下症とは何ですか?

 「性腺機能低下症」とは、性ホルモンのレベルが通常よりも低い状態を表します。視床下部とは、脳の一部で、性ホルモンの生成レベルを調節するところなのですが、「視床下部性性腺機能低下症」では、視床下部が通常のようには働かないために、性ホルモンの生成量が通常より低くなります。視床下部性性腺機能低下症は「カルマン症候群」とも呼ばれ、XY男性、XX女性どちらともに見られますが、男性の方が多く見られます。

 通常、カルマン症候群は先天的なもので、胎児の発達段階から起こるものです。性ホルモンの生成量が低いと、思春期の遅れ・欠如などがありえます。カルマン症候群を持つ男性は、通常、ペニスが小さく、精巣が陰嚢に降りていない状態(停留精巣)で生まれてきます。

 カルマン症候群はまた、嗅覚がない、あるいは低い状態も起こります。稀なケースですが、思春期以降、頭への事故や脳腫瘍などにより、視床下部性性腺機能低下症が起こる場合もあります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、カルマン症候群を持つ男性ジャズシンガー、ジミー・スコットさんです)

MRKHとは何ですか?

 胎児は最初は、2つの種類の体内生殖器官を持っています。ひとつはミュラーと呼ばれる器官、もうひとつはウォルフと呼ばれる器官です。女性の典型的な発達では、ウォルフ管は消失し、ミュラー管が子宮、卵管、そしてヴァギナの上部までを形成していきます。

 遺伝子的な女性(46,XX)の中には、MRKH(メイヤーロキタンスキークスターハウザー症候群)と呼ばれる性分化疾患を持つ女性がいます。MRKHの場合、ミュラー管が女性に典型的な形には発達しません。MRKHを持って生まれた女の子は、ヴァギナや子宮、卵管の一部もしくは全てが無い状態で生まれてきます。MRKHは、腎臓異常や骨格異常、聴覚の問題を伴っている場合があり、数は少ないですが、心臓や手の指、足の指の異常を伴うこともあります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)


(上の画像はMRKHを持つ女性たちのサポートグループ、The Beautiful Youのメンバー、下のふたつの画像はThe Beautiful Youのメンバーで、2013年のミス・ミシガンに選ばれた、MRKHを持つ女性、ジャクリーン・シュルツさんです)。




膣無形成とは何ですか?

 「膣無形成」とは、女の子・女性が、母親の子宮の中で胎児として成長していく際、ヴァギナ(膣)が発達しなかった状態のことを言います。女性の外性器のことを「ヴァギナ(膣)」と言う人もいますが、医学的には女性の外性器は実際には「外陰部」と呼ばれるもので、「ヴァギナ(膣)」とは、開陰から子宮へと伸びる管のことを言う名前なのです。赤ちゃんが生まれてくるのはこの器官を通してですし、ペニスの挿入に使われるのもこの器官です。頸部はヴァギナと子宮の接合点にあるものです。

 膣無形成には様々な原因があります。(よく見られる原因はMRKHと呼ばれる状態です。MRKHについては次の「よくある質問」をご覧ください)。もし女の子が膣無形成の状態で生まれた場合、膣無形成に関連することのある、その他の何らかの発達異常があるかどうか調べることのできる、小児科の専門医に診てもらうことが重要です。膣無形成の女の子の中には、子宮がある子もいれば、子宮がない子もいるからです。

 過去、ヴァギナ(膣)の無い女の子には、幼少期に膣を形成する手術をするよう、医師が勧めることがほとんどでした。現在では、手術を受けるかどうか、本人が大きくなって決められるまで待ったほうが良いというのが一般的です。手術の外科的・心理的結果は、成長してから行われるほうが成績が良く、女の子本人が手術をどうするか決められるまで保留したほうが、本人の同意も得られ、この種の手術後に必要なアフターケアを本人自身が行えるようになります。膣無形成を持つ女の子・女性の中には、手術をしないという選択肢もあります。圧力式ダイレーションも、手術なしの医療技術の一つで、膣拡張のために手段の一つとして考えられ得る場合もあります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

性腺無形成とは何ですか?

 性腺無形成とは、胎児発達期に、精巣や卵巣、あるいは(ずっと稀ですが)卵精巣などの性腺が発達しなかった人の状態のことを言います。つまり、性腺なしで生まれてくる状態です。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

クラインフェルター症候群とは何ですか?

クラインフェルター症候群について更に詳しい解説はこちら

 大多数の男の子・男性は1つのX性染色体と1つのY性染色体(46,XY)を持ち、大多数の女の子・女性は2つのX性染色体(46,XX)を持っています。クラインフェルター症候群は、少なくとも1つのY染色体と2つ以上のX染色体を持って生まれた男の子・男性に起きることがある症候群です。クラインフェルター症候群を引き起こしうる最も多い組み合わせは、47,XXYです。(47,XXYの性染色体を持っていたとしても、ほとんどの男の子・男性には、クラインフェルター症候群はあらわれません。つまり、クラインフェルター症候群とは、47,XXYといった性染色体を持つ状態を表すのではなく、一連の症状群を表すもので、この一連の症状群が現れる人に、47,XXY染色体を持つ人が多い、ということです)。

 47,XXY染色体はかなり一般的なもので、男性500人に1人の割合と見積もられています。その中でも典型的なクラインフェルター症候群の男の子・男性は、平均よりも小さな精巣で、精子の数が極端に低くなります。(様々な医学技術によって医療補助生殖が可能になっています)。他に、クラインフェルター症候群に関連した、他の男性との違いもあり、乳房発達や、学習障害アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラムが現れる人もいますが、クラインフェルター症候群による影響の幅は、人それぞれです。47,XXY染色体を持つ男の子・男性の中でも、クラインフェルター症候群の兆候はほとんど現れず、一生気が付かない人がほとんどです。


性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、クラインフェルター症候群を持つ男性、デイビッドさん(右)です)。


スワイヤー症候群とは何ですか?

 スワイヤー症候群は、「XY性腺発育障害」とも呼ばれることがあります。スワイヤー症候群を持つ女の子は、XY染色体で、性腺が適切に発達していない状態で生まれるからです。通常、胎児がXY染色体を持つ場合、胎児は精巣を発達させ、その精巣は体の内側でも外側でも男性に特有の発達を促進します。ですが、スワイヤー症候群の場合、性腺(この場合は精巣)は「線状(病跡)性腺」と呼ばれる状態になり、そのため発達が男性特有のものにならなくなるのです。体の外側の発達では、外性器は女性特有の発達をします。体の内側では、胎児は子宮と卵管、頸部、そしてヴァギナを発達させることになります。

 通常、線状(病跡)性腺は、診断後速やかに切除されます。なぜなら、線状(病跡)性腺はがんのリスクが高いからです。この状態の女の子は、思春期を迎えると思われていた時期になるまで、スワイヤー症候群が判明しません。スワイヤーを持つ女の子は、典型的な女性ならば女性思春期の乳房、女性特有の体つきの発達、そして生理などをひきおこすはずの卵巣がないため、女性に典型的な思春期を迎えないからです。

 スワイヤーを持つ女の子は、ホルモン補充療法を受ければ、女性に典型的な思春期を迎えることができます。女性ホルモンの補充を受ければ、生理も起こる人がほとんどです。他の女性から提供された卵子を使って体外受精IVF)を受ければ、スワイヤーを持つ女性も、妊娠し、自然出産が可能です。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)

(画像は、スワイヤー症候群を持つ女性、ノルマンさんです)。

外性器欠損とは何ですか?

 「外性器欠損」とは、意味的には、男性でペニスが無い状態、女性でクリトリスが無い状態のことを言いますが、実際には、男性がペニスの無い状態で生まれたことを指すのが一般的です。このような状態が、「先天的外性器欠損」と呼ばれています。もし男の子や男性が何かの事故で(犬に噛まれるなど)ペニスを失ってしまった場合は、「後天的外性器欠損」と呼ばれます。(当然ですが、後天的外性器欠損は性分化疾患ではありません)。

 先天的外性器欠損の場合、尿道口の位置は様々です。また、このタイプのケースでは、様々な他の変異が見られることもあります。性分化疾患全てに言えることですが、変異や生理機能を特定し、どのような治療を患者さんが必要とするか考えていくのには、個別的なところに目を向ける必要があります。

性分化疾患とは、「染色体、生殖腺、もしくは解剖学的に性の発達が先天的に非定型的である状態」のことで、「男でも女でもない」「中性」「第3の性」のことや、性同一性障害トランスジェンダーの人々、性自認のことではありません。)